交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
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自宅アパートに送り届けられた茉莉花は、半ば放心状態で靴を脱いで部屋にあがった。
バッグを持ったままラグの上にペタンと腰を下ろす。
「キス、しちゃった……」
身代わりで彼の花嫁として式に臨んだとき、誓いのキスは頬と頬を合わせただけだった。でも、今夜は違う。唇同士がたしかに触れ合った。
デッキで抱きしめられたときに包まれた彼の匂いも蘇る。シトラスの爽やかさとスパイシーさが合わさった、セクシーなフレグランスの香りだった。
自分の唇にそっと指先をあてる。とっくに熱は消えているが彼の感触はまだそこに残っており、茉莉花の胸を否応にも高鳴らせた。