交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
思いきり首を横に振る茉莉花を見て、吉鷹がおどけたように肩を上げ下げする。
少し寂しそうに見えたため、言い過ぎたと反省した。彼は、茉莉花と本当の夫婦になるためにいろいろと手を尽くそうとしているのだから。
「でも、私も覚悟を決めて吉鷹さんの妻になりました。だから〝夫婦生活〟も吉鷹さんに従います」
たとえ彼の目的が、妻という存在を世間に知らしめるためだとしても。
茉莉花自身にも、父の設計事務所を守る使命と、吉鷹の花嫁を逃がした責任がある。
お互いにそういったものの上に成り立つ結婚だと理解したうえで、吉鷹とはいい関係を築いていきたい。
「そんなに肩肘張るな。キミに無理強いはしたくない」
吉鷹は茉莉花の肩をトントンと軽く叩いて微笑んだ。
ハワイの結婚式では傲慢さを強烈に印象づけられたが、彼を知るごとに優しさを見せつけられ、そのたびに心が騒がしくなる。その頻度は日を追うごとに増えていき、茉莉花を大いに翻弄していた。
「心配しなくとも、茉莉花から俺に抱かれたいと思わせるから」
最後には宣戦布告するように言い、茉莉花の頬をさらりと撫でた。