交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

「それなら」
「きゃっ、な、なにを……!」


吉鷹は唐突に茉莉花を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。


「強制的に慣らす以外にない」
「や、ちょっと待ってください」
「待たない」
「でもでも」


彼の胸を押し返してジタバタするが、吉鷹はびくともしない。それどころか逆に強く抱きしめられ、かえって密着してしまった。


「そんなに構えるな。力を抜いてリラックスしろ」
「難しいことを言わないでくださいっ」


この状況でリラックスなんて、長い付き合いの恋人や長年連れ添った夫婦でなければ無理だ。心臓がありえないスピードで鼓動を刻みはじめる。


「今に慣れる」
「吉鷹さんは女性慣れしているからそうでしょうけど、私は――」


そこまで言って、嫌味だと気づいた。自分が不慣れだからといって、吉鷹の経験を責める筋合いはない。
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