交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
ここへはブライダルヘアメイクアーティストとしてやってきた。当然ながら花嫁ではない。茉莉花は新郎新婦をサポートする裏方として、ここにいるのだから。
「そう、キミが」
吉鷹が茉莉花に対して右手をひらりと上に向ける。
「そんな、どうして」
「それは俺のセリフだ」
首を小刻みに横に振って訴えた茉莉花だが、彼が間髪容れずに言い返す。
「式がはじまる時間なのに花嫁が忽然と姿を消したんだから」
たしかにその通りだ。〝どうして〟は今の彼のためにある言葉。
しかしだからといって、自分が花嫁役とは解せない。なぜ彼の花嫁の代役を務めなければならないのか。
「キミは指をくわえて花嫁が逃げるのを見ていたんだろう?」
「指をくわえてなんて」
「それじゃ逃亡に手を貸したと言えばいいのか?」