交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
裁きのあとの幸せ
十日が過ぎ、社長就任式の当日となった。
しかし、吉鷹はまだ会場入りしていない。帰国予定は昨日だったが、飛行機の計器トラブルでハノイを発つのが遅れたのだ。
就任式は午前十一時から。それまでには到着するというメッセージが届いたきりになっている。茉莉花は彼から式次第が書かれた案内を事前にメールで受け取ったが、観月建設に顔見知りは誰ひとりいない。式が執り行われるホテルに着いたときに、話の通っているスタッフに控室に案内されただけだった。
(吉鷹さん、間に合うかな……)
主役がいなければ式はスタートできないだろうが、心細さが募っていく。
結愛はあれ以降、茉莉花の前には現れていない。父親に融資の打ち切りを断られ、なす術もなく引き下がったのか。少なくとも茉莉花の父親の事務所は経営難には陥っていない。
不安な気持ちを抱えたままの就任式当日を迎えた。
「さてと、こんな感じでどう?」
茉莉花は美春によるヘアメイクの真っ最中。フィッシュボーンで作ったハーフアップのアレンジにはパールのヘアアクセがちりばめられ、メイクはアンティークローズのドレスに合わせてピンク系に仕上げてもらった。