交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
全身から気品が漂い、見慣れているはずのスーツ姿に胸が高鳴る。茉莉花は、吉鷹が真っすぐに突き進んでくるのを茫然と見つめた。
「おかしいな。試着したときにドレス姿は見たはずなのに……眩しすぎる」
目の前に立った吉鷹が感嘆のため息を漏らす。
その後ろで美春は「邪魔者は消えまーす」と小さく呟き、そそくさと部屋を出ていった。
「吉鷹さんこそ」
麗しい姿に心臓は静かになる気配はない。
長期の出張と長旅で多少の疲れは見えるものの、新社長としての意欲に燃えている様は外見からも明らか。日本を発ったときよりも精悍な顔つきだった。
吉鷹が茉莉花を引き寄せ、唇を塞ぐ。久しぶりのキスのため、触れるだけでも長くなる。
「会いたかった」
「私もです」
「久しぶりの抱き心地だな。少し太ったか?」
「もうっ、失礼ですよ、吉鷹さん」
彼に回していた手で背中をトンと叩く。吉鷹はハハッと笑った。