交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
笑顔のまま念を押す。
結愛が再び訪れたことは、今は黙っておこう。今日は吉鷹にとって大切な日だから、余計な話は耳に入れたくない。
最高の日にするのは、彼と結婚した茉莉花の務めでもある。そのために自分がいると言ってもいい。
茉莉花が彼の妻になったのは、当初この日を迎えるためでもあったから。
今はそこに愛が生まれ、それをふたりで育み、その結晶である命が宿っている。
吉鷹が優しく微笑む。
「わかった。それじゃ、そろそろ行こうか」
彼にエスコートされて控室を出る。
『資金繰りは事業拡大でも最重要項目。失敗したら新社長の評判がどうなると思います? 吉鷹さんは困るんじゃないかしら』
不意に結愛の言葉が過り、胸が詰まる気がしたが、頭を振って追い出した。
会場が近づくにつれ、人の数が増えていく。正装している人たちはみな、今回の招待客だろう。