交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
神父がたどたどしい日本語で促した。
美しい顔立ちをした新郎が、微かに笑みを浮かべる。
優美でいて妖艶なオーラを放つ彼が、茉莉花の本物の夫となる人だとうっかり錯覚し、不規則なリズムを刻む鼓動。瞳が揺れるのを止められない。
吉鷹がゆっくり近づいてくる。
(このままだと本当にキスしちゃう……!)
でも、ここで避けたら新婦ではない。とにかくこの場を花嫁として演じきることだけを考えていた。
体を硬直させて瞼をぎゅっと閉じる。そして次の瞬間――。
頬にやわらかな感触を覚えて目を開く。彼がキスをしたのは、茉莉花の頬だった。
偽物の花嫁と口づけなどできるものかと拒絶したのか、それとも偽りを演じる茉莉花に対する優しさなのか。
ホッとすると同時に肩から力を抜いた。