交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
お互いに名乗り、頭を下げる。
「副社長からお話はかねがね伺っております」
「恐縮です」
「ここだけのお話ですが、ハノイでも――」
「余計な話はしなくていい」
吉鷹がどこか焦った様子で永長を制す。永長は肩をすくめて茉莉花に訴えかけるような目をした。ハノイで茉莉花の話でもしていたのだろうか。彼の言い方からすると悪い話でないとは思うが、のろけでも恥ずかしい。
「観月新社長」
不意に声をかけられ、吉鷹と揃って振り返る。見覚えのある顔にハッとした。
「西宮大臣、本日はお忙しいところ足をお運びくださりありがとうございます」
国交省の大臣だ。吉鷹が観月建設の安泰ぶりをもっともアピールしたい人物である。
取り巻きを大勢連れ、中には永長のように屈強な体つきをした男もいる。たぶんこちらは本物のSPだろう。
「観月建設の発展を期待してますよ」