交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
紫はダイニングテーブルいっぱいに並べ、次々に小皿に取り分けては茉莉花にうれしそうに差し出していた。
「母さん、いくらなんでも茉莉花だってそんなに食べられないだろ」
「吉鷹の言う通りだ、紫。近頃の医者は、食事制限にうるさいと聞くぞ」
吉鷹と徳之助に制され、寂しそうに「……そう?」と皿を引っ込める。
ふたりに妊娠を打ち明けたのは、安定期に入ってからだった。
跡継ぎ優先主義という先入観があったため、男の子を強く希望されるかと心配したが、ふたりはどちらでも大歓迎だと手放しで喜んでくれた。
それ以降、紫はたまにこうしてマンションに訪れ、料理をふるまってくれている。
二カ月ほど前には茉莉花の母の訪問とタイミングが重なり、以外にもふたりは意気投合。連絡先を交換して、たまにメッセージのやり取りをしているという。
冷めきった夫婦だと吉鷹から聞いていたが、茉莉花の妊娠が関係修復のきっかけになったそうだ。
「お義母様、私、いただきます」
「そう? 食べられる?」
「はい。お義母様の手料理、おいしいですから」