交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
前もってルームサービスの連絡を入れておいたのか、吉鷹は料理が並ぶテーブルに茉莉花を誘った。
フランス料理だろうか。牛フィレ肉のステーキや鮭とほうれん草のパイ包み、鯛のクリーム煮などの料理はもちろん、デザートにりんごたっぷりのタルトタタンまである。
朝、ホテルでサンドイッチを二、三切れ摘まんだだけだったため、おいしそうな料理を前に空腹を思い出した。
食べ物につられて足を動かし、彼が引いてくれた椅子に座る。グラスには赤ワインが注がれた。
向かいに座った吉鷹が乾杯を促す。彼に倣ってグラスを手にし、お互いに軽く傾け合った。
「今日は本当に助かった」
「いえ、このような結果になったのは私にも責任がありますから。改めてお詫びを申し上げます」
グラスを置き、彼に頭を下げる。
今思えば、あのとき茉莉花は彼女を説得すべきだったのではないか。少なくとも茉莉花が花嫁の代役をするより賢明な措置だったような気がする。
帰国してから改めて結婚について話し合いの場を設けるべきだったかもしれない。興奮して取り乱した結論より、落ち着いてよく考えられるだろうから。