交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
(――ううん、ダメダメ。ほかに好きな人がいるのに神様の前で永遠の愛なんて誓えないから。やっぱり荒牧様は、ああするよりほかになかったの)
そう思いなおして、ふと気づく。
(それじゃ私は? 彼女よりもっと不相応な立場なのに神様の前で誓っちゃったけど……。でも代役なら天も見逃してくれるよね?)
頭の中は依然としていろいろな想いが錯綜中。豪華な料理を前に考え込んでいる茉莉花の向かいでは、吉鷹が「これ、なかなかだな」と言いながらパイ包みを口に運んでいた。
(新婦を逃がした私も悪いけど、いったいどういう神経しているの?)
彼からは悲哀に満ちた空気は微塵も感じられず、ただ目の前の料理を楽しんでいるだけに見える。控室で茉莉花に花嫁役を命じたときからそうだが、あまりにも飄々とした態度が不思議でならない。
「観月様は、どうしてそんなに平然としていられるんですか?」
そう尋ねずにはいられなかった。
当事者ではない茉莉花がこんなにも戸惑って悶々としているのに。
すると、牛フィレ肉のステーキに優雅にナイフを入れながら、吉鷹が茉莉花を見る。