交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
番外編~ささやかな願い
フランスでの挙式から一年が経った五月下旬。
悠生は一歳十カ月となり、すくすくと成長している。
四月からは保育園にも入園し、茉莉花も時短勤務で仕事に復帰した。
最近はいろいろな言葉を覚え、二語文が口から出ることもたまにある。成長の速度に驚きながら、毎日新しい発見の連続だ。
ある土曜日、茉莉花たちは三人で海へやってきた。
夏はもう少し先とはいえ、太陽はずいぶんと勢力を増している。海面に躍らせる光の眩しさに目を細めながら、茉莉花は砂浜に敷いたレジャーシートに座った。
吉鷹は悠生の手を引き、貝殻を拾ったり、波打ち際まで行っては波と追いかけっこをしたりする。
「あまり海には入らないでねー!」
ふたりに向かって声を張り上げる。
太陽の強さとは裏腹に、海水はまだきっと冷たいだろう。
振り返って茉莉花に手を振った吉鷹は「もう遅ーい」と返してきた。すでに悠生の半ズボンは濡れているようだ。
楽しそうな様子を見ていると、それくらいいいかと思わされる。