交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

茉莉花に縋りついて『逃がして』と懇願した結愛の姿が脳裏に蘇る。吉鷹が結婚にきちんと向き合っていれば、彼女の気持ちを繋ぎとめておけたのではないか。

少なくとも挙式当日に逃げる事態にはならなかっただろう。


「ずいぶんはっきりと言うね」


最初こそムッとした吉鷹は、すぐに気持ちを持ちなおしたのかクスッと軽く鼻を鳴らして自嘲気味に笑った。


「ほかの誰も言えないと思うので、代わりに言わせていただきました。新婦様に向かって『キミを愛するつもりはない』とか『婚姻は形だけのものだ』なんて、あまりにもひどすぎます」
「……え?」


フォークを持つ手を止めて吉鷹が不思議そうな顔をしたが、茉莉花はそのまま続けた。


「そもそも愛は最初からあるものじゃありません。ふたりで育てていくものではないでしょうか」


どんなカップルであれ、ゼロからのスタートは変わらない。それなのに最初から背を向けていたのでは、愛なんて永遠に生まれないだろう。
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