交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

もしもあのときに彼女を思いとどまらせていたら、ふたりが向き合うきっかけとなり、愛を育む方向に進めたかもしれない。茉莉花の行動ひとつが今、この状況を生んだのは明らかだ。

テーブルに両肘を突き、組んだ手の上に顎を乗せて優美な笑みを浮かべる彼に、言い返す言葉が出てこなかった。

唇を噛みしめ、状況が違えば間違いなくうっとりしてしまうような顔を見つめ返す。新婦を逃がした重責が、茉莉花に圧し掛かった。


「……少し考える時間をください」


そう答えるので精いっぱい。茉莉花は、用意された食事も半分以上が喉を通らずにスイートルームをあとにした。
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