交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
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ひとりになった吉鷹は、茉莉花が去った静かな部屋でワインのグラスを傾ける。
「おもしろい」
そう呟き、笑みを零した。
吉鷹の肩書きや地位に惑わされず、思ったことを臆せずポンポン口にする女性は初めてだった。ズバズバ指摘されたのに腹立たしさはなく、むしろ爽快なのが不思議である。
そんな威勢のよさとは裏腹に、バージンロードを震えながら歩くか弱さ、ホテルの部屋に誘ったときの警戒強さ。そのアンバランスさが非常に興味深い。
なにより純白のウエディングドレスは、まるで彼女のために用意されたもののように似合っていた。初めから吉鷹の花嫁は彼女だと錯覚し、美しさに戸惑いを覚えるほどに。
誓いのキスで触れた艶やかな頬の感触を思い出し、自分の唇に指先をあてる。
愛を育むなど、これまで考えもしなかったというのに。
自分の放った言葉の数々を思い返し、吉鷹は相好を崩した。