交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
バックルームのロッカーに荷物を入れ、茉莉花がまず向かったのはマリアンジュ自由が丘店を統括するマネジャーの部屋だった。
ノックのあとの「どうぞ」を待ち、「失礼します」と入室する。店内同様に白を基調とした部屋は清潔感に溢れ、ソファセットも置かれた機能的な部屋だ。
真向かいにあるデスクで、マネジャーの菊川聖吾が顔を上げた。
一重瞼が印象的で、さらりとした短い黒髪が爽やかな好青年だ。三十一歳にしてマネジャーなのはサロンではやり手である。
このサロンは男性スタッフも女性同様に黒いスーツが義務づけられており、自由が丘店トップの彼はその証として赤いポケットチーフを覗かせている。
「掛けてください」
茉莉花にソファを薦め、自分も向かいに座った。
「まずはハワイでの挙式、お疲れ様でした。いろいろと大変でしたね」
ハワイで執り行われた吉鷹と結愛の結婚式にマリアンジュから行ったスタッフは、茉莉花ひとりだけ。ヘアメイク以外は提携している現地スタッフが仕切り、報告も兼ねて事前に連絡を入れていた。