交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
「改めて、申し訳ありませんでした」
「伏見さんが謝る必要はありません。新婦の気持ちまで操作するなんて無理な話ですから」
「ですが、私がもっとしっかり荒牧様に寄り添っていたら……」
「伏見さんの仕事ぶりはよく知っています。ここだけの話ですが、ほかのヘアメイクアーティストの中でも群を抜いていますから」
もったいない言葉に恐縮しつつ首を横に振る。
「今回の件は不可抗力です。伏見さんの責任ではありません。もしも観月家や荒牧家から苦情の申し立てがあっても、私が全面的に引き受けますので心配いりませんよ」
「……もしかしてすでにそんな連絡が?」
「いえ、現時点ではありません」
菊川の言葉に安堵する。
「しかし伏見さんも大変な目に遭いましたね。新婦の代役などと……」
「その場を収めるのに必死でした」
それが正解だったのかは今でもわからないが、少なくともあの時点では最善の策だったと思いたい。――そのあとの吉鷹の提案を除けば。