交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

「なんにしても、今回の一件について伏見さんを咎めるようなことはありませんので」
「ありがとうございます。では、仕事に入ります」


菊川の部屋を出て店内に入るや否や、同様にサロンの専属ヘアメイクアーティストをしている同僚の池上(いけがみ)美春(みはる)が走り寄ってきた。
彼女も茉莉花と同じ二十七歳。後頭部で結んだストレートロングの髪が揺れる。茉莉花の腕を引っ掴み、店の隅に引っ張った。


「ちょっと茉莉花、聞いたよ」


挨拶をすっ飛ばしていきなり切り込む。切れ長の大きな目を真ん丸にして興奮気味だ。


「あっちで花嫁の代役をやらされたんだって?」
「もうその話が耳に?」


菊川がペラペラ話すとは思えないから、現地スタッフから伝わったのかもしれない。


「本当だったんだ」


茉莉花の反応を見るまで疑心暗鬼だったのだろう。美春はさらに目を大きくさせて詳しい話を求めた。
もう間もなくお客様を迎え入れる時間。茉莉花はハワイでの一幕を簡潔に話して聞かせた。
< 41 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop