交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
しかし茉莉花のアドバイスをことごとくなぎ倒し、吉鷹がどんどん追い込んでくる。
それまで困ったような様子で事の成り行きを見守っていた彼の両親まで賛同しはじめた。
「吉鷹の言うように、花嫁に逃げられたなんて前代未聞よ。観月の面目は丸つぶれだし、帰国したら外も歩けなくなるわ」
「そうだな。西宮大臣の前でもあるし、ここはそのお嬢さんにひと肌脱いでもらう以外にあるまい」
人生経験を長く積んだ親なら、こういうときこそ息子の暴挙を止めるべきではないのか。
それなのに彼の両親はそんなつもりはまったくないようで、息子の吉鷹を囃し立てた。
三人から猛烈にアタックされ、逃げ道がどこにもなくなる。実際、三人に壁際で包囲され、脱走は不可能。これ以上、逃亡者を作ってなるものかという強い意気込みを感じた。
「彼女の逃走を手伝ったキミの誠意を見せてもらおう」
吉鷹が鋭い目で茉莉花を見据える。断れると思うなよ、という強制力を前面に押し出した眼差しだった。
新婦に懇願されたとはいえ、逃げる手助けをしたのは茉莉花である。こんな事態になる前に、彼女の葛藤に気づけなかった負い目を感じているのは事実だった。