交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
打ち合わせで何度となく顔を合わせたときにふたりをもっとよく注視していれば、式直前に花嫁が逃げ出すことなどなかっただろう。茉莉花が気づいてさえいれば、こんな状況は訪れなかった。
戸惑い、揺れていた心がいっぽうに大きく傾く。人一倍責任感の強い茉莉花は顔を上げ、吉鷹をじっと見つめた。
「承知いたしました。私が花嫁として式に臨みます」
宣言した瞬間、彼の両親が安堵の表情を浮かべる。その中心で吉鷹は涼しげな表情をしていた。
そもそもの発端は、わずか三十分前に遡る――。