お前を地の果てまで追いかける〜御曹司の決意
そう、陸は本当に優しい人だった。

別れ話も遠慮がちに、言葉を選んで、伝えようと必死だった。

あんまり、深入りしちゃ駄目だよねっと自分に言い聞かせた。

夕飯を作ろうとした時、スマホが鳴った。

スマホの画面は陸だった。

「社長、どうなさったのですか」

「あ、森川さん、取引先に挨拶に行ってもう、くたくただよ」
「お疲れ様です」

「悪いんだけど、飯食わして貰えないかな」

「大丈夫ですけど、どちらに伺えばよろしいですか」

「森川さんのアパートに行ってもいいかな」

「えっ」

「駄目?」

「駄目じゃないですけど」

「スマホに住所送って、これから行くから」

「はい、分かりました」

社長は何を考えているかさっぱり分からない。

私の事覚えていないような素振りを見せたり、まるで寄りを戻そうとしているみたいに甘えてきたり、何があなたの本心なの?

そう言えば、はじめて会った時もこんな感じで甘えてきたよね。

< 11 / 61 >

この作品をシェア

pagetop