砂糖漬け
第十話 ピアス
それからアイは、いつも付けっぱなしだったピアスを、
出掛ける時以外はなくさないようにと、外して
小さなグラスにしまうようになった。
7月だというのにまだ涼しい日々が続いたある金曜日、
いつものようにアイが深夜に帰ってくると、
なにやらごそごそと探し物を始めた。
ボクは物音に気づき、どうしたのか尋ねると、
アイが泣き出し、
ボクが誕生日にプレゼントしたピアスをなくしてしまったと言う。
ボクは正直ショックだったが、それほど高価なモノではないし、
「小さなものだから仕方ないよ、また代わりのモノを買ってあげるから」
と言ってアイの頭を撫でた。
ごめんね、と何度も言いながら、アイはボクの腕の中で泣きながら眠ってしまった。
ボクもアイを抱きしめながら、眠りについていた。
翌日、ボクは休みなので、
アイが腫れた目を気にしながら仕事へ行くのを見送り、
ボクは溜まった洗濯物を背負って家に帰った。
父の姿はなく、リビングには母が疲れた顔でソファに座っていた。
母の涙を初めて見た。
なにか会ったのか尋ねると、
母は黙ってテーブルの上に置かれた父のスーツを指差した。
ボクは訳の分からないままスーツに手を伸ばすと、
上着の横に小さな金属片が2つ置かれていた。
「内ポケットに入ってたの」
小さな声で母が呟いた。よく見ると、小さなハート形のピアスだった。
出掛ける時以外はなくさないようにと、外して
小さなグラスにしまうようになった。
7月だというのにまだ涼しい日々が続いたある金曜日、
いつものようにアイが深夜に帰ってくると、
なにやらごそごそと探し物を始めた。
ボクは物音に気づき、どうしたのか尋ねると、
アイが泣き出し、
ボクが誕生日にプレゼントしたピアスをなくしてしまったと言う。
ボクは正直ショックだったが、それほど高価なモノではないし、
「小さなものだから仕方ないよ、また代わりのモノを買ってあげるから」
と言ってアイの頭を撫でた。
ごめんね、と何度も言いながら、アイはボクの腕の中で泣きながら眠ってしまった。
ボクもアイを抱きしめながら、眠りについていた。
翌日、ボクは休みなので、
アイが腫れた目を気にしながら仕事へ行くのを見送り、
ボクは溜まった洗濯物を背負って家に帰った。
父の姿はなく、リビングには母が疲れた顔でソファに座っていた。
母の涙を初めて見た。
なにか会ったのか尋ねると、
母は黙ってテーブルの上に置かれた父のスーツを指差した。
ボクは訳の分からないままスーツに手を伸ばすと、
上着の横に小さな金属片が2つ置かれていた。
「内ポケットに入ってたの」
小さな声で母が呟いた。よく見ると、小さなハート形のピアスだった。