砂糖漬け
第十三話 ありがとう
間違いなく、自分の父親と、自分の愛した人だった。
二人はさすがに大久保まで一緒に歩くとまずいと思ったのか、
いつもそうしているのか、ホテルを出ると別れのキスを交わし、
父は新宿駅へ向かった。
アイがこちらのほうへ向かってくる。
ボクはフードを被り直し、アイとすれ違った。アイはボクに気づいていなかった。
すれ違いざま、ボクは「今までありがとう。」と呟いた。
アイが一瞬振り向いたようだったが、ボクはそのまま父を追った。
西武新宿駅を通り過ぎ、大ガード西交差点で信号が変わるのを待っている父のすぐ後ろに立った。
母を騙し、ボクを騙した男。ボクの幸せを奪った男。
いつからアイと知り合ったかなんて関係ない。
今、目の前に居るのは、ボクの生きる理由を奪った男だ。
「父さん」
ボクが一言声を掛けると、父が振り返ったが、
すぐに背中の重い痛みに気づき、顔を歪めた。
「オマエ・・・なんで・・・」
父は掠れた声でボクに問いかけた。
「アイは、ボクのものだ。」
ボクはそう言いながら、バタフライナイフを握った手をねじった。
父の顔が更に歪み、叫び声を上げたが、始発電車の音に掻き消された。
口をパクパクさせながら、ボクに何かを言いたかったようだが、
そんなことはおかまいなく、ボクはナイフを抜いた。
ナイフと、ボクの手が、汚らわしいこの男の血で汚れてしまった。
二人はさすがに大久保まで一緒に歩くとまずいと思ったのか、
いつもそうしているのか、ホテルを出ると別れのキスを交わし、
父は新宿駅へ向かった。
アイがこちらのほうへ向かってくる。
ボクはフードを被り直し、アイとすれ違った。アイはボクに気づいていなかった。
すれ違いざま、ボクは「今までありがとう。」と呟いた。
アイが一瞬振り向いたようだったが、ボクはそのまま父を追った。
西武新宿駅を通り過ぎ、大ガード西交差点で信号が変わるのを待っている父のすぐ後ろに立った。
母を騙し、ボクを騙した男。ボクの幸せを奪った男。
いつからアイと知り合ったかなんて関係ない。
今、目の前に居るのは、ボクの生きる理由を奪った男だ。
「父さん」
ボクが一言声を掛けると、父が振り返ったが、
すぐに背中の重い痛みに気づき、顔を歪めた。
「オマエ・・・なんで・・・」
父は掠れた声でボクに問いかけた。
「アイは、ボクのものだ。」
ボクはそう言いながら、バタフライナイフを握った手をねじった。
父の顔が更に歪み、叫び声を上げたが、始発電車の音に掻き消された。
口をパクパクさせながら、ボクに何かを言いたかったようだが、
そんなことはおかまいなく、ボクはナイフを抜いた。
ナイフと、ボクの手が、汚らわしいこの男の血で汚れてしまった。