君が好きでたまらない!
 ある程度お酒もたしなんでいた私はついつい強気になってしまった。

「そんな風にいっつも女の子を誘ってるんですか?」

「はっ?」

「だってなんだか手馴れてるじゃないですか。イケメンなんですから、そういうことしないでほしいです」

「なんだ、やきもちか」
 
(はぁ~?!)
  
 新さんは照れたようにはにかみながら、お酒をちびちびと飲んでいる。
 このままでは怒りを酔いに任せてぶつけてしまいそう!と思っていた矢先、気を利かせた姉が、急用が入ったと言って私と一緒に抜け出してくれた。
 
 急いで社に戻り、ウィッグを取ってメイクを落とす。着替えると完全に元の『佳織』に戻っていた。姿見で本来の自分を確認すると、先ほどから感じているモヤモヤがさらに大きく胸を締め付ける。

「お姉ちゃんありがとう」

「うん、気をつけて帰りなさいよ」

「……あのね、来週の土曜日に新さんが二人で会おうって」

「変装したあんたと?」

「うん……。……また、頼んでもいい?」

「いいけど……。佳織はそれでいいの?」

「分からないけど……。行く……」

「そう。それじゃ土曜日にまたいらっしゃい。時間とかメールして」

「ありがとう、お姉ちゃん」

 意外にも姉は協力的だ。もっと根掘り葉掘り聞かれると思っていたのに、想定内だったのかあまり触れなかった。もしかしたら以前にも事務所の女の子に手を出していたのかしら。それに気づかせようとして私に変装を──?

 考えれば考える程、なんだか混乱してくる。姉も特に何も言わず送り出してくれて、その優しさが余計に胸に刺さった。

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