君が好きでたまらない!
寂しくてしかたがない
 私たちは家同士の都合で親同士が決めた、政略結婚だ。

 芸能プロダクションを営む父と、大手IT企業の会長であるお義父様が、学生時代の同級生。彼らが久々に同窓会で顔を合わせ、意気投合したことから始まる。なんでもその場で業務提携を決め、さらにはお互いの子供が未婚であると分かるや否やお見合いさせようと盛り上がってしまったらしい。

「佳織の縁談を決めてきたぞー!」

と、酔っ払いながら帰宅した父を家族総出で尋問。だが、呂律が回らないので、酔っ払いの戯言かと思っていたら、翌日神宮寺グループから食事の誘いが来た。日時や場所からもそれはお見合いとしか思えないので、我が家は大騒動になった。

 結局一週間後の昼間、私は指定されたホテルのラウンジに振袖姿で立っていた。業務提携を決めたばかりで、神宮寺グループの誘いは断れないと父が言い張り、母や姉は玉の輿だと乗り気で、恋人も想い人すら居ない私に拒否権はなかったのだ。

 緊張した面持ちの父、ウキウキしている母、そして不機嫌な私。三者三様の有様で神宮寺会長とそのご子息を待っている。

「ちょっと急展開すぎて困るんだけど……」

「いいじゃないか! 新くんには前にも会ったことがあるだろ? 知らない仲じゃないんだし、もし結婚したら社長夫人だぞ!」

(すでに社長令嬢ですけど。)

 不貞腐れる私にはお構いなしに、父はそわそわとラウンジを見渡す。同級生とはいえあちらは大手上場企業の会長だ。待たせてはいかんとかなり早い時間から、こうして立ちっぱなしで待っている。
 お相手の神宮寺新さんは神宮寺グループの中枢である、IT企業の社長をしている。以前、父の会社のパーティーでご挨拶をしたことはあるが、それはもう10年前の話で、お互い大人になってからは会っていない。
 若くして御曹司で社長!そんな優良物件が余っているのがおかしい。恋人がいるに違いない。あちらも私が相手では不足だろう。うん。

「佳織は顔はいいんだから! 自信持って!」

「そうだぞ! 佳織は顔が可愛い!」

 私の不機嫌さを察知して、両親が励ましてくれるのだが、どうにも顔しか褒められない。私は顔はいいらしく、父の芸能プロダクションの中にいてもタレントと間違えられたこともある。アイドル顔というやつらしい。
 だが、人見知りだし、注目されるのも、主張するのも苦手なのだ。趣味も特技もこれといって無いし、振袖着てお見合いとか無理!
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