君が好きでたまらない!
 そこからはあっという間だった。
お見合い当日に結婚を決めた私達は、両家の両親に報告。父親たちは、その日のうちに結納の日取りや入籍日、披露宴の会場まで決定した。さすがは経営者というべきか、仕事が早い。

 そして目が回るほどの多忙な日々が始まった。父の芸能事務所で働いていたが、私は職場を離れることになり、引継ぎをする毎日。
 婚約指輪と結婚指輪を外商を呼んで購入、式場との打ち合わせに衣装合わせ、ハネムーン先の選定、予約など、ほとんど新さんが進めてくれたけれど、私の意見も大切にしてくれた。二人の新居も同時に探していて、気づけば新居に引っ越して入籍もしていた。

 なんと見合いの日から三か月で入籍、四か月目の良き日に披露宴を行ったのだ。婚約発表からトップスピードで駆け抜ける電撃結婚に、私の妊娠を連想したゲストの方もいたようだ。だが、そんなことは一切なく、デートもあまりできないまま、私たちは結婚したのだった。
 だけど、新さんは本当に色々な準備を漏れなく丁寧に協力して行ってくれて、私は幸せ絶頂だったのだ。準備に積極的なことが、愛されている証拠だと信じて疑わなかった。結婚式だって、至れり尽くせりの幸せな式だったのだ。私が微笑めば、彼も微笑んでくれる。それだけで、幸せだった。

 だが、異変に気付いたのは、初夜のこと。

「新さん、これからよろしくお願いします」

「あぁ。こちらこそ」

 新さんはお風呂上がり。セクシーが増してかっこいい!結婚式を終えたその日の夜。こんな旦那様にこれから抱かれるのだとドキドキしていた。だが。

「では明日からも早いし、寝るよ。おやすみ」

「え? あ、お、おやすみなさい」

 私たちの初夜はスルーされた。翌日からの新婚旅行でも何もなかった。そういえば、キスも結婚式の時にした誓いのキスだけだ。いままでの結婚式や引っ越しの準備でだって、何度も二人きりになったのに、そういう雰囲気にならなかった。

 これは、おかしいのかもしれないと気付いたのは、結婚から1か月たった頃だった。しかし、今まで両親に蝶よ花よと大事に育てられてきた箱入り娘には、男性の誘い方なんてわからない。

 お見合い結婚ってそんなものなのだろうか。今まで舞い上がっていたけれど、もしかして新さんは「偽装結婚」のつもりでこの結婚を持ちかけたんだろうか。
 いやいや、そんなことはない。いつもにこやかに接してくれるし、手をつないで歩いたことだってある。きっとここまで忙しかったから疲れているのよ。そう自分に言い聞かせて日々を過ごしていた。
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