君が好きでたまらない!
 結婚式から一年。あれから二回だけキスをした。誕生日プレゼントとして勇気を出しておねだりした一回と、デートの終わりに軽くされたもう一回。自宅では全く触れない。仕事がとても忙しそうで、ほとんど家にも帰ってこない。

 結婚記念日の今日は仕事で遅くなるらしい。

 冷めていく料理を見つめながら、一人瞳を濡らす。私たちの関係も冷えている。それがとてつもなく悲しい。愛されていると信じていたのはいつまでだっけ。誕生日は祝ってくれたしプレゼントだって貰った。私が贈ったネクタイピンも毎日つけてくれている。デートは少ないけれど、毎日連絡は取りあっている。
 だけど、キス以上のことをしないと気づいてからは、心の底を寂しさが巣食っている。ずっと埋められない穴があって、どんどん大きくなっていく。

 でも男性経験のない私には、何が普通で、どうすればいいか、分からない。幸せな結婚をしたと思っている、家族や友人にも相談出来ないでいた。

 最初の数か月は頑張ってみようとしたのだ。こっそりセクシーなランジェリーを身に着けたり、後ろから彼に抱き着いてみたりした。でもやんわりと拒否されてしまってからは、もう何もできなくなってしまった。
 今は、家政婦みたいになっている。

『今日は遅くなります。結婚記念日なのにすまない。今度どこかへディナーに行こう』

 彼から来たメッセージを何度も読み返す。結婚記念日だってことは、覚えていてくれたんだ。すまないと思っているのなら、ディナーなんかより、今日一緒に朝まで過ごしてほしかったです。でも、そんなこと、口にできない。

『わかりました。無理しないでくださいね』

 不貞腐れた気持ちを上手に蓋出来ずに、そっけない返信をしてしまった。そのこともますます私の心を追い詰めていく。今日はさすがに泣いていいかな。お姉ちゃんに電話……したら、心配かけちゃうか。あぁ、一人は寂しい。

 寂しいです。新さん。それでもあなたが好きなのは、どうしてでしょうか。
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