君が好きでたまらない!
私が自宅でしてきたメイクを落としていくと、丁寧に下地を塗りはじめた。そしてファンデーションを重ねていく。次にブラウン系のアイシャドウでグラデーションを作っていき、黒目の下から目頭までラメをのせてなじませる。アイライナーをひき、つけまつげをつけると、少し釣り目に見えるのはなんでだろう。不思議だ。
鏡の中の私が、どんどん別人に変化していく。内気で人見知りで、自分の意見がなかなか口に出せない私が、自分をしっかり持っていそうな今時の派手な女性に綺麗にされていくのだ。
やがてメイクが完成すると次は髪の毛をまとめていく。今の私の髪型は肩までかからない程度のボブヘアだ。それを丁寧にアップにしていく。そして、明るい髪色のロングヘアのウィッグをつけた。
すると、本当に別人が出来上がってしまった。自分でも、これが自分だと言われても気づけないかもしれない。
「今日ね、新さんがウチに打ち合わせしにくるのよ。その時に社内で彼とぶつかってコーヒーをこぼす。父さんと私も謝罪するけど、あんたも謝罪して、お詫びに~とかいってデートに誘う」
「な、なにその計画!」
「可愛いギャルにくらっときたら、クロじゃん?」
「そ、そんな、騙すようなこと……」
「一年も放っておかれたんだもん、そのくらいして慰謝料もらいな!」
「えええ! む、無理だよ……」
「鏡を見なさい! 綺麗でしょ。別人でしょ。大丈夫よ。それで、別人のあんたになびかないなら、ちゃんと妻を大切にしてくれてるって自信持てるでしょ。がんばりなさい」
鏡の中の女性は、茶髪のロングヘアがよく似合う気の強そうな美女に見える。流石姉のメイク術だ。新さんだって気づかないだろう。妻とは正反対の見た目になった今、彼はどんな反応をするんだろう……。
「決まり! 午後から社長室で歓談してるはずだから、コーヒー持っていきな!」
「お、お姉ちゃん!」
「はやくはやく! 衣装部行って着替えるわよ!」
「えー!?」
そうして私は、戻れない一歩を踏み出してしまったのだった。
鏡の中の私が、どんどん別人に変化していく。内気で人見知りで、自分の意見がなかなか口に出せない私が、自分をしっかり持っていそうな今時の派手な女性に綺麗にされていくのだ。
やがてメイクが完成すると次は髪の毛をまとめていく。今の私の髪型は肩までかからない程度のボブヘアだ。それを丁寧にアップにしていく。そして、明るい髪色のロングヘアのウィッグをつけた。
すると、本当に別人が出来上がってしまった。自分でも、これが自分だと言われても気づけないかもしれない。
「今日ね、新さんがウチに打ち合わせしにくるのよ。その時に社内で彼とぶつかってコーヒーをこぼす。父さんと私も謝罪するけど、あんたも謝罪して、お詫びに~とかいってデートに誘う」
「な、なにその計画!」
「可愛いギャルにくらっときたら、クロじゃん?」
「そ、そんな、騙すようなこと……」
「一年も放っておかれたんだもん、そのくらいして慰謝料もらいな!」
「えええ! む、無理だよ……」
「鏡を見なさい! 綺麗でしょ。別人でしょ。大丈夫よ。それで、別人のあんたになびかないなら、ちゃんと妻を大切にしてくれてるって自信持てるでしょ。がんばりなさい」
鏡の中の女性は、茶髪のロングヘアがよく似合う気の強そうな美女に見える。流石姉のメイク術だ。新さんだって気づかないだろう。妻とは正反対の見た目になった今、彼はどんな反応をするんだろう……。
「決まり! 午後から社長室で歓談してるはずだから、コーヒー持っていきな!」
「お、お姉ちゃん!」
「はやくはやく! 衣装部行って着替えるわよ!」
「えー!?」
そうして私は、戻れない一歩を踏み出してしまったのだった。