クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
私、真剣なのに…。」
口を尖らせて、怒った顔をする。

「俺も真剣だよ。
真剣に紗奈を口説いてる。」

「…ダメです…。先生ですよ?
生徒に手は出しちゃいけないんです。」

「意味分かって言ってる?

まだ手は出して無いし、まだ生徒だと思ってるよ。」

「君も俺も悪い事はしてない。
心配しなくても、紗奈が学生の間は何もしないよ。…表立ってはね。」
爽やかにニコッと笑うがなんか含みがありそうで怖い。

要は紗奈と自分をさらけ出して話せる事が嬉しくて仕方がない。家族でさえもいつからか他人行儀の話し方しかしなくなった。

心開いて話せる相手はごく僅かだ。

紗奈に対しては感情が邪魔をして理性が保てないから、勝手に自分をさらけ出してしまっている気がするが、そんな自分も悪く無いと思う。

「他に質問は?後、五分くらいで着くので、1問だけ受け付けます。」
学校モードで話しかける。

紗奈は少し考える。
「先生はお金持ち何ですか?」

そんなストレートな聞き方は初めてで、素直な紗奈らしいと愛しく思う。

「そう言う風に聞かれたの初めてだな。
そうだな。
金持ちなのは親で、俺はその恩恵を受けてるだけだと思ってる。
親父も爺ちゃんから受け継いだ会社を苦労して建て直して、努力無しでは今の地位は保てなかっただろうしね。」

「謙虚なんですね。先生らしいです。」
紗奈はフワッと笑う。

「だからその恩恵を紗奈に投資しても誰も文句は言わないよ。」

「もっと、他に為になる事に使って欲しいです。」
紗奈は困り顔で言う。

「俺にとってはとても有意義な使い方なんだけど。
紗奈が側に居てくれれば他には何も要らない。」

俺自身を見てくれる紗奈にとって、金はただのアクセサリーなんだと思う。
だから要らないと言う。もらったら何に変えて返さないといけないと思っているんだろう。

逆に、いままで群がってくる連中は金目当てで、俺自身がアクセサリーだったんだ。

要は心が満たされるのを感じ、ますます彼女が愛しいと思う。
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