クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
要が連れてきてくれたレストランは、要の住む街の静かな住宅街にあった。

白い壁に囲まれたアーチ型の門を入るとたちまちタイムスリップしたかの様な錯覚に捉われて驚く。
まるで、明治大正浪漫といった雰囲気で、庭にはテラス席もあり、所々にあるランタン風の照明が落ちついた雰囲気を醸し出している。

「凄い。まるで昔にタイムスリップしたみたい。」
紗奈は思わず、感嘆のため息を吐く。

「オーナーが知り合いで、俺が設計した。」

「えっ!!
先生の設計ですか!早く言ってください。
…でもお借りしたファイルには無かったと思います。」
首を傾げながら言う。

「本当のプライベートだから、設計料ももらってない。」
紗奈は目を見開いて驚く。

こんなに素敵な設計を無償で描くなんて。

「コンセプトは何ですか?」

「古き良き和洋建築って感じかな。
ここの店長に一枚の写真をみせられて、こんな雰囲気がいいって言われた。」

「先生の設計は和モダンな感じが多いですよね。」

庭で佇みながら紗奈は要の設計について夢中に話した。

要もこそばゆいながらも嬉しくて、微笑みながら紗奈の話に相槌を打つ。
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