クールな准教授は密かに彼女を溺愛する


「とりあえず、そろそろ中に入るよ。」
要にエスコートされながお店の入口に向かう。
洋館のような佇まいに、ステンドガラスをはめ込んだ開き扉も素敵で紗奈はお店の中が気になってワクワクする。

「いらっしゃいませ。」
着物の上にヒラヒラのフリルが付いたエプロンを身につけた店員さんが顔をだす。

「こんばんは、店長の知り合いです。」

「承っております。 
お席はこちらになります。」

室内に入ると、左手に赤いベルベットの長椅子の待合室があり、右手には木質のシックなカウンター、その上には昔懐かし骨董品の様なレジが置かれ、細部にまでこだわった事がよく分かる。

中はそれなりに広くて、テーブル席とソファ声が10席程と、厨房を見渡す事ができるカウンターも10席程あった。

その場を通り過ぎて案内された場所は庭先にある東屋で、ランプの灯りだけが仄かに灯る素敵な一角だった。


「5月になるとホタルも飛ぶらしい。
この場所は以前、和風庭園だったから、池と川は残しておいたんだ。」
そう言いながら、紗奈の為に椅子を引いて座らせてくれる。

お庭の雰囲気もとても良くて、和と洋が重なりあった不思議な空間だった。

「素敵ですねー。
落ち着いた雰囲気とか灯りの演出とか私も好きです。
思いがけず、先生が設計した建物に来れて凄く嬉しいです。」
瞳をキラキラさせて紗奈は要に微笑む。

「良かった。喜んでもらえて。」
要も素直に嬉しくて微笑む。
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