クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
紗奈の事情
内心、紗奈は安心していた。
もっといろいろ聞かれるのかと思った。
家の事情や学費の事。
なぜ、このゼミを選んだのか、とか。
先生は何も聞かずただ、ココアを飲むように言うだけだった。
「…美味しい…」
思わず、口に出して言ってしまう。
ハッとして口を手で抑える。
聞かれたかな?
チラッと先生を盗み見する。
「甘いもので癒されたしたか?」
先生はこちらを見ずに、書類に目を落としながら話してくる。
「引越しでバタバタしてて、やっとホッとひと息付けた気がします。」
「顔色が悪いです。
疲れてる時はちゃんと自分を労って、
ご飯をしっかり食べて良く寝る事です。」
「…はい。」
俯きながら紗奈は答える。