クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
要から連絡が来て、研究室の戸締まりをしてドアの鍵をかけ急いで待ち合わせ場所の裏門へ向かう。


「中山さん!」

研究室を出た廊下近くの階段で紗奈は急に声をかけられビクッとする。

「あっ…。白石先生…お帰りなさい。」
声をかけて来たのは要と一緒に研修に行っていた白石だった。

「要くんは?駅前まで一緒に帰って来たんだけど、急に用事を思い出したって走って先にいっちゃったんだよねー。
山中さんと約束があったの?」

「あ、いえ。…提出出来てなかったレポートがあって…。」
紗奈は内心、ハラハラしながら上手に対応しなければと頭をフル回転させる。

「で、要君はもう帰ったの?」

「えっと、…慌てて出ていかれたので…私も戸締まりだけして帰るところです。」

嘘が付く事に慣れない紗奈はそれでも何とか取り繕うように言葉を継ぐむ。

「生徒を置いて帰るなんてよっぽど急いでたのかな?研究室の鍵預ろうか?
中山さん一人で帰れる?」

「あ、か、鍵は明日、北原先生に直接お渡しする事になっているので大丈夫です。」

不審に思われてないかな?とドギマギしながら、それでも冷静を保って話す。

「駅まで一緒に行こうか?」

「いえ、大丈夫です。
すいません。私も急いでますので失礼します。」
紗奈は慌ててペコっとお辞儀をして、キョトンとする白石先生をその場に残して小走りでその場を後にする。

不自然じゃなかっただろうか?何か変に思われなかったか心配になりながら要が待つ場所に急ぐ。
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