クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
冷たいお水を渡されて一息付く。
「母に電話してみますね。
多分反対はされないと思いますが、妹が絡んでくるかもです…気にしないで下さいね。」
「大丈夫。もし、認めて貰えなくても何度でも許しを乞う覚悟だから。」
強い眼差しで紗奈を安心させる。
少しの不安を胸に、紗奈は実家に電話する。自分の親なのに緊張してしまう。
それを宥める様に隣に要が座り手を繋いで勇気付けてくれる。
「もしもし。お母さん?
紗奈だけど、今ちょっと時間いいかなぁ?」
『久しぶりねー、
なかなか電話くれないから心配してたのよ。』
久しぶりに聞く母の声は穏やかで安心する。
『そう言えば、仕送りありがとね。
だけど、紗奈だってお金入り用なんだから、バイト代は自分の為に使ってね。』
「愛奈(まな)も新学期いろいろ買い揃えるのがあるんじゃないかと思って、少しだけどね。」
『もう十分よ。ところで今日は何の話し?』
急に本題に触れられ紗奈はドギマギしてしまう。
「実は…、えっと…
最近お付き合いを始めた人が居て、お母さんに挨拶したいって言うからちょっと代わっていい?」
『えっ!!
彼氏が出来たの?
わざわざ挨拶なんて、そんなのいいのに…』
母も突然の事で動揺してるのがよく分かる。
「今代わるね。」
要にスマホを渡す。
さすが、要は落ち着いていて普段通りの笑顔で紗奈に笑いかけてくれた。
「お電話代わりました。
初めまして。北原要と申します。」
要はスラスラとこれまでの事を掻い摘んで話していく。
『大学の先生だなんて…
紗奈はまだまだ子供ですし、なんだか勿体ないお話しです。
しかも住む場所も、学費までこれから払って頂けるなんて…何てお礼を言っていいか…本当に紗奈で良いのですか?』
「自分には紗奈さんしかいません。
側にいて欲しいと、この先も一緒に居たいと強く望んでいます。
もちろん、教師としての立場では間違った行動だったと自覚はしていますが、後悔は一切していません。
紗奈さんの事は自分が責任を持って卒業させますのでご安心下さい。」
少しの間があり、
『…紗奈が幸せなら、私から言う事はありません。どうぞ、よろしくお願いします。』
母が戸惑いながらも肯定してくれて、紗奈も要も安堵して思わず繋いでいた手をぎゅっと握り締める。
「ありがとうございます。
また、近いうちに2人でご挨拶に伺いたいと思います。」
その後、電話は母から妹に代わったらしく、くだらない質問にも要は丁寧に答えてくれていた。
『お姉ちゃん、
絶対近いうちに2人でこっち来てね。
私もお母さんも味方だよ。』
「ありがとう。愛奈も部活に勉強頑張ってね。バイバイまたね。」
姉妹の可愛いやり取りを聴きながら要は安堵し、はぁーっと深く息をはく。
実は、内心かなり緊張していた。
元々顔に感情が出にくい方だが、緊張すると度を越して判りにくくなるらしい。
「要さん、ありがとうございました。
母も妹も認めてくれたみたいでよかったです。」
握っていた手が緊張の余り、手汗が凄い。