クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
「うーん。うちは結構特殊な家庭だから、またそのうち俺から話しておくよ。」

要さんの家族の事は家族構成くらいしか分からない。そういえばお母さんの話は聞いた事が無いけど?ご存命なのかな?紗奈はどう言って聞き出すべきか悩む。

「何か、今のところまでの質問がありますか?」
要が突然授業の最後にいつも言うセリフを言う。

「どうぞ、中山さん。」
先生口調で言う要が面白くて、ついふふっと笑ってしまう。

「はい…。先生、お父様とご兄弟のお仕事の話しは以前教えて頂きましたが、お母様のお話は聞いたことが無いと思ったので…」

「そうか…。
ちょっと面倒な話だからなかなか話せずにいたんだけど、
母親は居ると言えばいるが…。俺の産みの母は俺を産んですぐ亡くなったんだ。育ての母は俺とは血がつがってない。
俺はいわゆる妾の子なんだ。」

えっ!!紗奈は驚きを隠せない。父親と兄弟の仲は良好に見えたし、ごく普通の三兄弟だとばかり思っていた。

「ご、ごめんなさい。
軽く聞いていいお話しでは無かったですね…。」
申し訳なくて目が泳ぐ。

「いや、結婚するのに自分の出生を話して無いのはフェアじゃなかった。つまらない話しだけど知っておいて。
だからって父親や兄弟から差別されて育った訳じゃないから、自分が腹違いだって知ったのも中学に入ってからだ。」

それからこれまでの生い立ちを要は掻い摘んで話した。

幼少時代は兄弟分け隔てなく育った事。

自分の出生を知ってから、一緒に暮らす事に違和感を覚え、全寮制の高校に行った事。
その後大学から一人暮らしを始め、それからはあまり実家に帰って無い事。

父からはうちの会社で働けと誘われたが、自分の力で切り開いていきたいと説得して大学准教授になった事。

母親は、きっと会社で働かなかった事で跡継ぎ問題がクリアしたからホッとしてるだろうと言う事。

親からたまに電話があってもお見合い話しばかりで嫌になってる事。

全て話して要の心は軽くなった。

「…じゃあ。
私なんかが要さんのご実家に着いて行ったらお義父様達は怒るんじゃ無いでしょうか…。多分、由緒正しいお家柄の御令嬢と結婚して欲しいと思ってるのでは?」

紗奈は肩を落として俯いて呟く。
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