クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
『もしもし、要から電話だなんて珍しいな、どうした?
見合いする気になったのか?』

「いえ。実は結婚を前提に付き合っている人がいます。なので二度と見合いの話は持って来ないでください。」

『なんだって⁉︎
結婚なんて興味がないと言っていたじゃないか?どう言う心境の変化だ?』


「この人ならずっと一緒に居たいと思う相手に会ったんです。」
要は冷静に話す。

『ちょ、ちょっと母さんが代わりたいそうだ。』
父が珍しく慌てて言ったかと思うと久しぶりに母の声を聞く。

『要さん、どう言うことかしら?
どこの誰とも分からない他人と付き合うなんて。
お見合い相手はしっかりしたお家の方よ、貴方にぜひ会いたいって先方から言われているの。一回くらい会ってみてもいいんじゃないかしら?』

「会った所で断るのに、相手に失礼では?申し訳ないですが時間の無駄です。」

そう言えば、昔から母はそう言う人だった。人の話にはまったく聞き耳を持たず自分の思い通りになる様、指図して有無を言わさない。ある意味お嬢様だ。

「母さん、私のする事が気に入らないのなら親子の縁を切っても構いません。そのくらい彼女が大事なんです。」

『そんな勝手はさせません。
貴方を家族として家に入れたのは私のお陰なのよ?今が恩返しの時じゃなくて?
良く考えで頂戴、一時期の気の迷いで一生を決めていいの?後で後悔しても知らないわよ。』

「貴方に、母親らしい事をしてもらった記憶はありませんが、分け隔てなくここまで育てて頂いて有難いと思っています。
でも、これとそれとは別です。
彼女はどんな令嬢にも引けを取らないほど心が綺麗な人です。
今後、彼女に何かしたらすぐにでも親父の縁を切りますからどうぞお見知り置きを。」

ついキツイ言い方をしてしまったが、田中弁護士を使って要の近辺を探っているのは母かその近しい誰かだと確信している。

『あんな大学生にうつつを抜かして何考えているの?私を困らせたいのだったら検討違いよ。』

やっぱりそうだ。かなり挑発的に言ったのは母からの自供を取る為だ。

「やっぱり貴方だったんですね。
田中弁護士をご存知で?」

『田中弁護士なんて知りませんよ。なんの話しかしら?』

「では何故彼女をご存知なんですか?」

『それは…ほら知り合いに聞いたのよ。未成年の子と同棲してるって…』

「彼女は21歳です。
その知り合いの方に伝えておいて下さい。彼女に少しでも近づいたら容赦しませよからって。要件はそれだけです。
では、失礼します。」

言いたい事だけ言って電話を切る。
今まで表面上は母とも上手くやってきたつもりだ、これほどまでに怒りを見せた事は今までに無かった。

少し冷静を欠いてしまったと要はため息を吐く。

今の対応が彼女にとって吉と出るか凶と出るか少し不安になる。
先程の話振りでは、直接田中弁護士に依頼した人物が別に居るらしい事が分かった。

父もあの感じだと何も聞かされていない様だし兄や弟には俺を付け回した所で何のメリットがない。

俺の事を嗅ぎ回って現状を知りたいヤツって⁉︎紗奈の事を母に話してメリットのある人物…成程‼︎もう1人居るな。と要は気付いた。

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