クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
それから、
疑問だらけの翔の訪問の1時間程後に要は帰ってきた。

「お帰りなさい。お疲れ様でした。」
玄関までお出迎えして紗奈はホッとする。

「ただいま。兄が来たんだって?」
靴を脱いでいつも通り洗面所に行く要の背中を追いかけながら紗奈は話す。

「何か大切な書類を持って来て頂いたみたいです。でも、帰りがけに不要なら破り捨ててって伝言されていきました。どう言う事でしょうか?」

「ははっ、たいした書類じゃないんだよきっと。多分、書類は二の次で紗奈の事を見に来たんだ。何か嫌な事は言われなかった?」

要が心配そうに紗奈の顔を覗き込む。

「いいえ。特には…とても楽しいお兄様でした。」
カレーを食べて行った事を言えない紗奈は何て伝えるべきか迷う。

「楽しい?
俺より社交的でうるさいくらい喋るだろ?
大丈夫だった?翔の相手は適当ぐらいで丁度いいから気にするな。」

「要さんに似た所もあって兄弟だなぁって嬉しく思いました。」
紗奈はにこにこ笑いながら、翔の事を思い出していた。嵐みたいに駆け抜けて行ったなぁと思う。

「妬けるな。翔に心奪われたの?
直ぐに取り戻さないと。」
そう言って、早急にキスをされる。

紗奈はびっくりして目を閉じる事も忘れて固まってしまう。
「…あっ…。」
無防備な唇に舌を差し入れられ慌てる。
「…っん…。」
そんな紗奈をなかなか解放してはくれず、抱き上げられてキスをされながら気付けばリビングに運ばれていた。
紗奈は要の肩に抱きつくしか術はなく、されるがままに息を荒くする。

チュッと音をさせてやっと離れた要に寄りかかりながら息を整える。

「…あの、先にお風呂にしますか?それともご飯にしますか?」
回らない頭で冷静になろうとおぼろげに聞く。
「それとも、私って言ってくれないの?」
微笑みながら、要に揶揄われ顔を赤くする。
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