クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
2人で後片付けをして紗奈を先にお風呂に勧める。
要はその間に翔が持って来た書類を見ようと手を伸ばす。
中は見開きの見合い写真だった。
母が言っていた相手だと瞬時に気付く、あれだけ言ってまだ諦めてないのかと深くため息を吐く。
要は破り捨てようと台紙を開き引き裂く、何気なく写真を見ると何処かで会った様な気がする。
誰だ?女性に対してあまり興味が無い要にとって、紗奈以外はその他大勢としか認識されない。
考え込む。
あっ!!
京都の学会でしつこく声をかけてきた女子大の准教授だ。プロフィールを見ると松永里英と名前が書いてある。
父から兄に渡って届けられた意図は解らないが、近くの女子大に勤めていた筈だ。
もしかしたら田中を使って俺の周辺を探っていたのは彼女かも知れない。
とりあえず翔に電話してみる。
「もしもし、要です。
この書類、どう言う事ですか?
既に父には断りを入れた筈ですが。」
『お疲れ〜。
久しぶりに電話して来たと思ったらやけにご立腹だなぁ。』
要ははぁーっとため息をついて翔に問う。
「母さんがまだこの話し断ってないって事ですか?」
『いや、違う。
もともと先方から話しがあったんだ。大学の准教授らしくて何処かで要に会って一目惚れしたらしい。
モテる男は大変だなぁー。』
他人事の様に言う翔にイラっとしながら感情を抑えて要は冷静に言う。
「なるほど、これは直接会って断った方がいいって事ですね。」
『紗奈ちゃん可愛いよね。僕気に入っちゃった。』
「はぁっ⁉︎
何しに来たんですか?
父に言われて偵察ですか?
貴方達に迷惑はかけていない筈だ。ほっといて頂けますか。』
さすがの要も怒りをあらわにして、普段より低音で早口に吐き捨てる。
『怒るなよ。
応援してやるって言ってるの僕は。
要の事は大事な弟だと思ってるよ。たとえ腹違いでも、同じ家で育った同士だ。
親の言いなりで結婚した僕が、見合い結婚は間違いだったと気付いたのは結婚して半年後だ。せめて要には幸せになって欲しい。
だから敵を教えてやろうと思ってね。
早かれ遅かれ紗奈ちゃんに害が及ぶ前になんとかしろよ。
親父もきっと母さんには言えないが同じ気持ちだと思うよ。』
はぁーっと、もう一度深いため息を吐いて要は言う。
「貴方の意図は分かった。
…素直に礼を言うよ、教えてくれてありがとう。」
『どういたしまして。
なんなら田中弁護士に話してみようか?
僕も田中はゴルフ仲間だから。』
「…貴方が入ると余計ややこしくなるから大丈夫です。
…紗奈と何を話したんです?」
気になってた事を率直に聞いてみる。
『えーっと、紗奈ちゃんは何も言わなかった?
じゃあ。何も言う事ないな。
あんな純真な子はなかなか居ない大切にするんだぞ。』
「貴方に言われなくても…。大切にしています。」
『へぇー。
お兄ちゃんは嬉しいよ、要はこのまま1人で生きていくのかと本当に心配してたんだ。良かった良かった。』
大人になってから兄とは呼んだ事は無いが、お節介で陽気な性格は変わってないなと呆れる。
「見合い結婚して後悔してるんですか?
側からみたら上手くやってるのかと思ってました。」
『まぁ。表面上は子供も居るし、お互い仲良くしてる様に見えるだろうね。
でもさ。週末は必ず実家に帰るし、夕飯だって作ってもらった事は一度も無い。
カレーいい匂いだったなぁー。紗奈ちゃんみたいな子をお嫁にもらえば幸せだろうなぁってちょっと思っちゃったんだよな。』
「紗奈は料理が好きなだけで、その為に一緒にいる訳じゃない。」
家政婦代わりに置いてる訳じゃ無いと説明する。
『もうさぁ。結婚しちゃえば?
生徒と先生じゃ何かと堂々と出来なくて可哀想だよ彼女が。』
さすが察しがいいなと感心する。
「そのつもりです。出来れば早く書類だけでもちゃんとしたいと思ってます。」
『さすが要だね。
父さんと母さんには俺から認めてやれって言っておくよ。
お前くらいは自由に生きて欲しいと思ってる。』
「その事については自由に今までやらせてもらってて、有難いと思ってます。」
『今度さぁ。僕も夕飯に誘ってよ。紗奈ちゃんの手料理食べたいな。』
「…自分の嫁に頼んだらいいじゃないですか?」
『あのお嬢様が手を汚してまでやると思う?子供のオムツだって替えた事ないんだぜ、俺も無いけど…お風呂には一、二回入れた。』
「…子供って3歳くらいですよね?
それなのに一緒に風呂に入ったのが一、二回って…お互い様なんじゃないですか。」
『まぁ。俺も仕事が忙しくてほっとき過ぎだのがいけないんだよねー。』
軽く言ってはいるが、後悔が滲み出ている。
「今からでも向き合ってみれば?」
『要にアドバイスされる日が来るとは…感無量だ。』
「大袈裟ですよ。
…俺が結婚した暁には家族で招待しますよ。」
『それじゃ。楽しみに待ってる。その前に奥さんと向き合えるかどうかが問題だなぁ。』
ふぅーっと、ため息を吐く翔は珍しい。
久しぶりにプライベートの話しをして妙に2人照れ臭くなってそそくさと電話を切った。
翔は翔で悩みはあるらしい。
お互い向き合う事が遅くなければ今からだってやり直せる筈だ。
兄にも幸せになって欲しいと要は願う。
要はその間に翔が持って来た書類を見ようと手を伸ばす。
中は見開きの見合い写真だった。
母が言っていた相手だと瞬時に気付く、あれだけ言ってまだ諦めてないのかと深くため息を吐く。
要は破り捨てようと台紙を開き引き裂く、何気なく写真を見ると何処かで会った様な気がする。
誰だ?女性に対してあまり興味が無い要にとって、紗奈以外はその他大勢としか認識されない。
考え込む。
あっ!!
京都の学会でしつこく声をかけてきた女子大の准教授だ。プロフィールを見ると松永里英と名前が書いてある。
父から兄に渡って届けられた意図は解らないが、近くの女子大に勤めていた筈だ。
もしかしたら田中を使って俺の周辺を探っていたのは彼女かも知れない。
とりあえず翔に電話してみる。
「もしもし、要です。
この書類、どう言う事ですか?
既に父には断りを入れた筈ですが。」
『お疲れ〜。
久しぶりに電話して来たと思ったらやけにご立腹だなぁ。』
要ははぁーっとため息をついて翔に問う。
「母さんがまだこの話し断ってないって事ですか?」
『いや、違う。
もともと先方から話しがあったんだ。大学の准教授らしくて何処かで要に会って一目惚れしたらしい。
モテる男は大変だなぁー。』
他人事の様に言う翔にイラっとしながら感情を抑えて要は冷静に言う。
「なるほど、これは直接会って断った方がいいって事ですね。」
『紗奈ちゃん可愛いよね。僕気に入っちゃった。』
「はぁっ⁉︎
何しに来たんですか?
父に言われて偵察ですか?
貴方達に迷惑はかけていない筈だ。ほっといて頂けますか。』
さすがの要も怒りをあらわにして、普段より低音で早口に吐き捨てる。
『怒るなよ。
応援してやるって言ってるの僕は。
要の事は大事な弟だと思ってるよ。たとえ腹違いでも、同じ家で育った同士だ。
親の言いなりで結婚した僕が、見合い結婚は間違いだったと気付いたのは結婚して半年後だ。せめて要には幸せになって欲しい。
だから敵を教えてやろうと思ってね。
早かれ遅かれ紗奈ちゃんに害が及ぶ前になんとかしろよ。
親父もきっと母さんには言えないが同じ気持ちだと思うよ。』
はぁーっと、もう一度深いため息を吐いて要は言う。
「貴方の意図は分かった。
…素直に礼を言うよ、教えてくれてありがとう。」
『どういたしまして。
なんなら田中弁護士に話してみようか?
僕も田中はゴルフ仲間だから。』
「…貴方が入ると余計ややこしくなるから大丈夫です。
…紗奈と何を話したんです?」
気になってた事を率直に聞いてみる。
『えーっと、紗奈ちゃんは何も言わなかった?
じゃあ。何も言う事ないな。
あんな純真な子はなかなか居ない大切にするんだぞ。』
「貴方に言われなくても…。大切にしています。」
『へぇー。
お兄ちゃんは嬉しいよ、要はこのまま1人で生きていくのかと本当に心配してたんだ。良かった良かった。』
大人になってから兄とは呼んだ事は無いが、お節介で陽気な性格は変わってないなと呆れる。
「見合い結婚して後悔してるんですか?
側からみたら上手くやってるのかと思ってました。」
『まぁ。表面上は子供も居るし、お互い仲良くしてる様に見えるだろうね。
でもさ。週末は必ず実家に帰るし、夕飯だって作ってもらった事は一度も無い。
カレーいい匂いだったなぁー。紗奈ちゃんみたいな子をお嫁にもらえば幸せだろうなぁってちょっと思っちゃったんだよな。』
「紗奈は料理が好きなだけで、その為に一緒にいる訳じゃない。」
家政婦代わりに置いてる訳じゃ無いと説明する。
『もうさぁ。結婚しちゃえば?
生徒と先生じゃ何かと堂々と出来なくて可哀想だよ彼女が。』
さすが察しがいいなと感心する。
「そのつもりです。出来れば早く書類だけでもちゃんとしたいと思ってます。」
『さすが要だね。
父さんと母さんには俺から認めてやれって言っておくよ。
お前くらいは自由に生きて欲しいと思ってる。』
「その事については自由に今までやらせてもらってて、有難いと思ってます。」
『今度さぁ。僕も夕飯に誘ってよ。紗奈ちゃんの手料理食べたいな。』
「…自分の嫁に頼んだらいいじゃないですか?」
『あのお嬢様が手を汚してまでやると思う?子供のオムツだって替えた事ないんだぜ、俺も無いけど…お風呂には一、二回入れた。』
「…子供って3歳くらいですよね?
それなのに一緒に風呂に入ったのが一、二回って…お互い様なんじゃないですか。」
『まぁ。俺も仕事が忙しくてほっとき過ぎだのがいけないんだよねー。』
軽く言ってはいるが、後悔が滲み出ている。
「今からでも向き合ってみれば?」
『要にアドバイスされる日が来るとは…感無量だ。』
「大袈裟ですよ。
…俺が結婚した暁には家族で招待しますよ。」
『それじゃ。楽しみに待ってる。その前に奥さんと向き合えるかどうかが問題だなぁ。』
ふぅーっと、ため息を吐く翔は珍しい。
久しぶりにプライベートの話しをして妙に2人照れ臭くなってそそくさと電話を切った。
翔は翔で悩みはあるらしい。
お互い向き合う事が遅くなければ今からだってやり直せる筈だ。
兄にも幸せになって欲しいと要は願う。