クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
要と田中は玄関に到着して、コンシェルジュに挨拶してからロビーの待合室に急ぐ。

女性が1人ソファに座っているのが見えた。

田中が要に手をかざし、僕に任せてと無言で頷く。

「今晩は。松永様、なぜ貴方が此処にいらっしゃるのですか?」

携帯を眺めていた松永がハッとして顔をあげる。
「…田中弁護士こそ何故、此処にいらっしゃるの⁉︎」
真っ赤なワンピースに真っ赤な唇の松永が目を丸くして驚く。

低い声で怒りを込めて田中は言う。
「僕は貴方に直接北原先生に会いに行ってはいけないとお話ししましたよね?

貴方は指示に反き、僕に内緒でここまで来た。残念ながら誓約書に違反した事になります。今ここで契約破棄させて頂きます。」

「な、何を言っているの⁉︎
貴方がなかなか報告をしてくれないから、直接お話ししに来たんです。」
ヒステリック気味に松永は答える。

2人の様子を少し離れた所から眺めていた要が、ゆっくり松永に近づいて行く。

パッと要に目線を合わせた松永はびっくりして立ち上がる。

「こ、今晩は、北原先生。お待ちしていました。」
先程のヒステリックな雰囲気をひた隠しニコリと要に笑いかける。

一方、要は冷めた目を向け真顔で静かに話し出す。

「なぜ貴方が此処にいるのですか?

一度だけ京都でお会いしたと認識していますが、この場所を教えた事は一度もありません。」
普段より低く響く要の声に松永は一瞬怯み目が泳ぐ。
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