クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
要はエレベーターに乗り自宅に急ぐ、紗奈が心配して待ってるはずだ。

エレベーターから降りて玄関まで小走りになる程気持ちが急く。


ガチャッ。

玄関ドアの開く音を聞いて、紗奈は急いで廊下を走る。
「おかえりなさい。大丈夫でしたか⁉︎」
気持ちが溢れ、思わず抱きついてしまう。

要も靴を脱ぐ事も忘れ、紗奈を力強く抱き止める。
「ただいま、…何事も無くて良かった。」
ぎゅっと抱き締め合い、お互いが無事である事に安堵する。

「何があったんですか?」
要の胸に顔を埋めながら、そっと問う。

先程の電話で只事じゃない気配を感じ、紗奈は1人ソワソワと要の帰りを待っていた。

「紗奈に…何かあったらと…怖くて仕方なかった…。」
ポツリポツリと話す要は明らかにいつもの彼じゃ無く、心無しか声も震えている。

「私は大丈夫ですよ?
家でいつものようにご飯を作っていただけです。」
たまらず紗奈は要の逞しい背中を撫ぜる。

「紗奈の機転が効いたから…何事も無く治まったんだ。…ありがとう。」

「訪問者の方はお知り合いでしたか?」

「いや、顔見知り程度だ。家の住所を教えた事すらない。」

紗奈は「えっ⁉︎」とびっくりして目を見開き要を見上げる。

玄関の鴨居の段差のせいで、いつもより近い目線に戸惑い、再び恥ずかしくなって俯く。

そんな紗奈が可愛くて愛しくて、ささくれ立った要の心が凪のように穏やかに鎮まるのを感じる。

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