クールな准教授は密かに彼女を溺愛する

先生は優し過ぎると紗奈は思う。

1人1人の生徒にこんなに時間を割いていたら、大変じゃないかと勝手に心配する。


コンコン。

「お疲れ様、要くん。
夕飯食べに行かない?」

軽い感じでドアから声がして顔だけ出す人がいる。

「白石先生…、ちょっと待ってて下さい。」
要が返事をする。

「あれ?
珍しく女子生徒がいる。こんばんは。進路相談?」

白石先生って担任の?

「いえ。ゼミの説明です。
彼女ガイダンスに参加出来なかったので、先生のクラスの生徒ですよ。」

紗奈は急いで立ち上がり、頭を下げる。

「短大から編入の中山紗奈です。
よろしくお願いします。」

「ああ。昨日休んでた子だね。
よろしく。北原ゼミに女子なんて珍しいね。」

そんなに女子率低いの?
私、やっていけるんだろうか?ちょっと心配になる。

「白石先生、彼女が不安になるでしょ。やめてください。」
要が咎める。

「むさ苦しいのは本当の事でしょ。
まぁ。もし、ダメだったら僕のゼミおいで。」
白石はニコッと微笑んで紗奈の頭を優しくトントンする。

どう反応すべきか分からず固まってしまう。

「白石先生、セクハラで訴えられますよ。
気をつけて下さい。」
要は思わず睨みつける。

「あ、あの。

お話しはよく分かりましたので、
私帰ります。ありがとうございました。」
 

「ちょっと待って。

中山さん。1人で大丈夫ですか?
駅まで送りましょうか。」
要も慌て立ち上がり、紗奈に近づく。

「大丈夫です。先生お忙しいところ、
お時間ありがとうございました。」
軽くお辞儀をして紗奈は足速に去って行った。

「珍しいね。
要君が女子に優しいの。」
< 28 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop