クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
ゼミ生には冴えない男だと思われてるはずだ。
それでいい。

真剣に取り組んでくれる者のみを歓迎したい。
客寄せパンダはもう懲り懲りだ。




コンコンコン。

「はい」

「こんにちは。」
遠慮がちに扉がそーっと開く。

要は今日の授業で集めた小テストの採点をしながら手も止めず答える。

「課題の提出でしたら、その黒いボックスにお願いします。」

「あっ、いえ、あの…。」

歯切れの悪い話し方に気が止まり、
要は顔を上げ、訪問者を見る。

「私、三年の中山紗奈と言います。
…今年度からこちらに編入して来た者です。」

遠慮がちにそっと話す彼女をメガネ越しに見る。
見かけない子だ。

今時珍しい素朴な外見だ。

黒縁メガネで染めたことの無い黒々したキレイな髪を三つ編みで2つに縛り、まるで田舎から今出て来たばかりの様だ。


三年生の授業は受け持ってはいるが、
1学年で100人以上いる生徒を全て把握は出来ていない。

三年生になると、必須科目以外の授業は自由に選択出来る為、本人が習いたい内容でカリキュラムを組む事が出来る。

大きく分けると、建築デザイン、構造設計、環境設備、都市開発に分けられる。

要が受け持つのは建築デザインの住宅設計になる。

毎年附属の短大から試験を受けて半分以上の学生が編入してくるのだが、彼女はどうやらその1人らしい。
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