クールな准教授は密かに彼女を溺愛する

「ハ、ハンカチ濡らしてきます。」
急いで側から離れようとする。

「行かないで。」

先生が呟く様にそう言うと、紗奈の腰辺りの後ろに両手を回して囲いこむ。逃げられなくなってしまって戸惑う。

心臓がドキンと弾む。

「せ、先生…」

先生は紗奈のお腹辺りに頭をトンと預けて俯いてしまう。

「だ、大丈夫ですか?
ど、どこが痛いんですか?」
動揺しながら、どうする事も出来ず、目の前の先生の髪を撫でてみる。

サラサラして触り心地の良い髪質で、いつもは見上げてばかりなのに先生のつむじが見れるなんて貴重だなぁとぼんやり思う。

「痛いの痛いの飛んでいけ。」と呟いてみる。

「ハ、ハハハ…ごめん、そんなに痛くない。」
不意に先生は顔を上げて笑う。

目線が近過ぎて直視出来ない。

不意に額と額をコツンと合わせられて、どうしていいか分からず目をぎゅっと瞑る。

どのくらいそうしてたのか、長い様で短い時間だったのか…。
まるで時が止まったかの様だった。


トントン。とノックの音。

ビクッとして2人身体が離れる。

「要くーん。居る?会議の資料もらって来たんだけど。」
隣の研究室に白井先生の声が響く。

「時間切れか…。」
先生はそう呟いて書庫を出ていく。
 

「こっちにいます。すいません。
今日の会議の資料ですか?ありがとうございます。」
廊下から先生の声がする。

紗奈はしばらくその場を動けずに、ドキドキする心臓が鎮まるのをひたすら待つしかなかった。
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