クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
北原准教授の苦難
酒井さんのチームに紗奈を入れた。
振分けしたのはもちろん要だ。
女子同士だし、話しやすいだろうと思った。彼女は面倒見が良いので何かと助けてくれるだろうと。
後1人はかなり悩んだが、真面目で浮いた話しの無い石原君を選んだ。
紗奈に害が無さそうな人選をしたつもりだ。
3人の話し合いに、つい聞き耳を立ててしまう。
そして、紗奈がバイトをしている事を知った。確かに、経済的にも大変そうだと思っていたが、知らなかった事に小さくショックを受ける。
ゼミとバイトの両立は出来ているのだろうか?
彼女はきっと弱音を誰にも吐かないだろうし、無理をしていないだろうか?
心配になる。
あの日以来、
彼女と2人にならない様に、何事も無かった様にして過ごした。
この気持ちを彼女に伝える事が出来ればどんなに楽になるだろうか、と日々思うが、
自分勝手な気持ちの押し付けで、彼女がここに居辛くなるのは避けたい。
その思いだけで何とか理性を保っている。
彼女は純粋に、俺の設計を気に入ってくれている。俺自身を好きな訳ではない。
勘違いしてはいけない。
だけど、もしも誰かに奪われたらと思うと心が張り裂けそうだ。
松島と2人で居るのを見かけた時は衝撃を受けたが、その後、授業でも一緒にいるところを見ないし、座る席も離れるようになったので安心した。
教師という立場でバイトの事を聞いていいだろうか?
プライベートな事を聞くのに他の生徒がいるのはまずい。
どうやって聞き出すべきだろう?
彼女の事になると、教師として、どう立ち回るべきか感情が邪魔をして正しい決断が出来ないでいる。
そう思うと、今日も顔色が悪い気がした。
最近少し元気がない様に思う。
彼女を気にかけ過ぎているせいで、過敏になっているだけだろうか?
やっぱり、彼女を呼び出す口実を作るには
あの、お手伝い券を使うしかないだろう。
疲れている彼女に雑用をさせるのは気が引けるが、他に手段が無いから仕方がない。