クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
昼休みに雑用で彼女を研究室に呼んだ。
コンコンコン。
平常心で接しなければと雑念を払うかのように要は深呼吸をする。
「はい。」
「失礼します。」
ドアが開く。
紗奈がそっと研究室に入って来た。
「ありがとうございます。
すいません。お呼びだてして、お時間大丈夫でしたか?」
平常心を装って要は紗奈に話しかける。
「いえ。大丈夫です。
先生はお昼食べられましたか?」
また。お昼の心配をされる。
要は、前と同じだなと頭の片隅に思う。
「今日は時間があったので、学食で食べました。」
「中山さんは?
ちゃんと食べてますか?
少し顔色が悪い気がしますが大丈夫ですか?
ソファに座って下さい。」
「大丈夫です。
元々、血色が良くない方なので気にしないで下さい。」
ソファに座りながら紗奈が微笑む。
先日よりも血色が悪く見える。
元々白くて綺麗な肌だけど、より血の気がない様に思う。
「中山さん、単刀直入に聞きます。
バイトをしてるそうですが、ゼミとの両立は大丈夫ですか?
無理をしてる様に見えてなりません。」
心配し過ぎて、呼び出す為に作った口実の雑用のお願いもそっちのけで聞いてしまう。
「ゼミは楽しいですし、
そこまで無理をしてるつもりはないんですけど…。
少し睡眠不足なのかもしれません。
でも、全然大丈夫です。
熱が出てもいつも、1日で下がっちゃうくらい、意外と丈夫なので。」
紗奈はニコリと笑ってみせる。
先日、ゼミの帰り際に一瞬見た顔をした要がそこにいる。
やっぱり、私の事で心配させてしまってたんだ。
「先生、雑用ってどんなお仕事ですか?」
要は頼むべきか一瞬迷う。
「…毎年、提携する企業に学校のパンフレットを送付するのですが、いろいろバタバタしてうっかり後回しになっていたので、それをお願いしようと思っていたのですが…。」
「そんな事まで先生がやってるんですね。」
紗奈は要の仕事量の多さにびっくりする。
「普段はゼミ生にも手伝ってもらうのですが、コンペも始まって忙しそうなので自分でやろうかと。」