クールな准教授は密かに彼女を溺愛する

「凄いね。全部自分で作ったの?」

「はい。料理は趣味みたいなものなので作っるのが楽しいんです。」

あんまり心配させたく無くて、ちょっと大袈裟に言う。

要は目を細め一通り見た目を堪能すると、
箸を手に取って、「頂きます。」と手を合わせる。

一通りの所作が凄く綺麗で紗奈は思わず見惚れてしまう。

「どれから食べようか迷います。
どれがお勧めですか?」

「卵焼きが心配です。
甘いのとしょっぱいのとどっちが先生の好みか分からなくて迷いました。」

「じゃあ。卵焼きから頂きます。」
にこりと笑って、卵焼きを一口パクリと口に運ぶ。

「うん!出汁が効いてて美味しい。
甘さも丁度良くて好きな味です。」
先生が本当に美味しそうに食べてくれて紗奈は安心する。

「良かったです。」

「一緒に食べましょう」と要は紗奈に言うので、自分のお弁当を開けて頂きますをしてから食べる。
その様子を、要は目を細めて見つめながら幸せに浸っていた。

「唐揚げも柔らかくて美味しいです。
揚げ物とか時間かかったんじゃないですか?」

「いえ、あらかじめ下準備はしてたので大丈夫ですよ。」

「凄いね。自分はまったく料理とかしないので尊敬します。」
いえいえ、と首を横に振りながら紗奈は謙遜する。
「先生は忙しいから時間が無いですよねきっと。」

「まぁ。家には寝るために帰るくらいですからね。」

「大変なお仕事ですよね。私こそ尊敬します。」

要は笑いながら、
「好きな事やって生活してるので、大変でも無いですよ。」

「でも、先生の設計はどれも凄く考えられてて、さすがだなって思いました。」

「それ、貸したファイルの事?
感想とか言わないでって言いましたよね?」

「一個だけ聞いてもダメですか?」

「怖いな。
どの図面について?
ものによってはノーコメントだからね。」


「えっーと。水の教会です。」

「あーー。アレは長野にあります。」

「実際に建築されたんですね!!
凄いです。実物見てみたい。」

「田舎なのでなかなか行く機会がなくて、自分も完成発表の時に一回行ったきりです。」

「私、プライベートで見に行ってみたいので、場所教えてくれませんか?」

「それが聞きたかったの?」

「本当に建築されてるか知りたかったんです。」

「そうか、今度連れてってあげるよ。」
何気無しに言ってしまって、要はハッとする。

「えっ…えっ⁉︎」

「あっ…。
いえ…、またゼミで計画立てて行けたらいいですね。」
苦し紛れにいい訳しながら、つい、気持ちが出てしまったと動揺する。

「そういえば、プリンを買っておいたので、ぜひ食後に食べて下さい。」
そう言って立ち上がり、冷蔵庫に行きながら冷静になろうとはぁーっとひと息吐き出す。
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