クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
金曜日は学会でそれぞれの大学から研究結果を発表する為、多くの教授や准教授が京都に集まった。

興味深い話しや新たな試み等が聞けて良かったと思う。
夜にはちょっとした晩餐会があり、夫婦で参加する人が大半で独り身としては居場所が無く窮屈に感じになるが、付き合いだから仕方がないと割り切って参加する。

何処に居ても何をしてても、ふとした瞬間に紗奈の事を思い出す。

ご飯は食べただろうかと、1人で満員電車に揺られて帰っているのだろうか、と思うたび心配になって早く帰って話をしたいと思う。

「今晩は。北原准教授ですよね。」

知り合いの教授と談話をしている時、ふと声をかけられる。

「はい、そうですが?」
返事をして振り返ると、紺のイブニングドレスを着た女性が1人。

「私、都内の大学でデザインを教えています。松永と申します。」
名刺を差し出され、何気なく名刺交換をする。
近くの女子大の助教授だった。
背丈は紗奈より少し高く、髪は紗奈より短めで落ち着いた感じが、同世代か少し上かと想像する。

雑談をしていた教授がそそくさとその場を離れて行き、2人で話す事になる。
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