あなた私の夫と不倫してますよね?
「もう、離婚しよう」
この男と居る限り、今回乗りきっても、絶対にまた同じ事が起こる気がする。
もしかしたら、今以上に。
「でも、もうすぐ子供生まれるのに…。
離婚なんて、ないでしょ?」
楓は私の突き出たお腹を、見上げている。
現在、私は妊娠中。
もうすぐ臨月。
「だから、桃子ちゃん暫く働けないでしょ?
離婚しない方が、桃子ちゃんの為だよ」
そう、宥めて来る。
こんな時に、実家に頼れたら…と思うけど。
私の両親、特に父親には、楓との結婚を反対されていたのに、
それを押し切って結婚した以上、金銭的に頼れない。
「美容師なんてチャラチャラした職業の奴なんか、辞めておけ!」
それが、父親の私と楓との結婚を反対した理由。
楓の職業は、美容師。
確かに、普通の会社員と違い、髪色とかけっこう派手なので、
見た目はチャラチャラして見えるけど、
仕事に対して楓が凄く真面目なのは私はよく知っている。
ただ、父親本人もそうなのだからか、公務員至上主義の父親には、それは理解して貰えないみたいで。
でも、楓と離婚して、お金もなく子供を抱えた私を見たら、流石に父親も私に情けをかけてくれるのでは?
それに、シングルマザーとかなら、国からの手当てもあるし?
なら、やはり楓とはもう離婚した方がいいのかもしれない。
「―――母さんに、いくらか頼んでみようかな」
ポツリと、そう楓は言うけど。
「それはダメだよ!
お義母さんも大変なのに!」
楓の家は、幼い頃に両親が離婚していて、
お義母さんが苦労して楓と、楓の弟を育てて来た。
その楓の弟の大学の奨学金を、確か今もお義母さんが返していたはず。
「なら、どうすればいいんだよ?」
そう言うけど、元はと言えばあんたのせいでしょ!と、もう怒る気力も無くなって来る。
「本当。
借金じゃなく、まだ浮気とかの方が良かった。
浮気ならお金は減らないし。
もしそれで離婚になっても、あんたと相手の女から、
がっぽり慰謝料を請求出来て…」
慰謝料…。
相手の女から、慰謝料?