恋におちたとき
 耳から首筋、鎖骨、二の腕に脇を通って乳房。先端を甘噛されてまたイッて、お臍から恥丘、脚もストッキングとの境目を思う存分舌と唇でなぞられた。お腹の奥がずっときゅんとしている。だから彼の気がようやく済んで、彼自身が入ってきた時、私の体はそれだけで歓喜と快楽に震えてしまった。

「んんーっ」

 お腹の中、彼のカタチがはっきりと分かる。突起の裏の方、彼の段差がぐりっと擦れてまた軽くイッた。

 湿った水音、打ち付けられる肌、絶え間ない嬌声。私の中は彼を奥へ奥へと引き込もうとし、彼はそんな私を翻弄するように律動を刻む。私も彼も同じ快楽を目指し、集中して、気持ちよさが大きく膨れて、そして、

「あー!」
「くっ……!」

 二人同時にイッた。

 しばらく互いの心臓の音を聞いていたけれど、彼の余韻も治まったのか、そっと抜かれて後始末をして戻ってくる。ベッド横のルームランプだけ点け、二人でブランケットにくるまって、カーテンを開けたままだった窓をぼんやりと見た。

「雨、まだ降っている?」
「いや、止んだみたいだな」

 もう外はすっかり暗くなっていて、景色を見ることは出来ない。時折、外を走る車のライトと街灯が窓についた水滴に反射して、滲んだきらめきを見せていた。静かな時間。二人だけの世界。彼の腕が私の肩に回されたから、私も彼の肩に頭を預けた。

「俺の、奥さん」

 ポツリと言われて、顔を上げた。じっとこちらを見つめる彼を、見つめ返す。その表情はなんだか照れ臭そうで、でもだからこそ、その言葉を噛み締めているのがよく分かった。

「私の、旦那さん」

 彼の真似をして、言ってみる。途端に気恥ずかしくなったので、多分彼も同じ気持ちなんだろう。

「これからも、よろしくね」
「こちらこそ」

 キスをして、なんだか二人、照れくささがピークに達して吹き出してしまった。そして笑いながら、この人とこれからずっと一緒にいられるなんて、なんて素敵なことだろうと思った。

 この雨は、恵みの雨。いつまでも、いつまでも。


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